【建築プロジェクトで、”いい仕事はひとりではできないよ”という話】
建設現場で仕事をしていると、よく”イレギュラー”という感じのトラブルに遭遇します。
よくあるのは、「設計図に描かれている通りに納まらない」とか、「設計図にはそこまで詳しく描かれていなくて、現場で施工してみて初めて調整が必要だとわかった」とか。
とにかく、このままでいい訳が無い状況にぶつかります。
どうにかしなければならない訳ですが、なんかそれっぽく見えるように、ごまかしていい訳では当然ありません。
品質・機能・性能を守れるように、対応や修正を行う必要があります。
この時、一番大切なのは『関係者全員が現状を正しく把握して、”何がベストか?”を考え、知恵を出し合う』ということです。
しかし、そもそも「何故このような状況になってしまったのか?」
必ず原因はある訳です。
「そこに責任があるのでは無いか?」
「そこが責任を取るべきでは無いのか?」
確かにその通りです。
しかし、特に建築プロジェクトは”多くの人がそれぞれの立場で関りあい、ひとつのものを作っている”ということから、いわゆる”責任の所在”をはっきりさせることが難しい側面があると思います。
当然、契約行為なので、杓子定規に追求していけば、ある特定の人(組織)にたどり着きますが、果たしてそれが実態かと言うと疑問があります。
しかし何より、現場で工事が始まってから詳細図面を描いたり、物が決まったりするのが当たり前の世界なので、極論すれば、そもそも設計図自体が完成したもの(実際の建物を完璧に現したもの)では無い、ということです。
なので、現場での細かい調整が発生し、その調整に伴うトラブルが起きる、ということは必然的とも言えることになります。
このような事態になった時にまず必要なのが『現状把握』です。
「今がどういう状態で、本来どうしなければならないのか?」
ここをしっかり理解する必要があります。
その上で、『現実的に何ができるのか?』を検討していくことが大切です。
この時に、”誰がどんな役割で、どのような権限があるか?”を理解していることもポイントになります。
例えば、何らかの問題が生じて、部分的にでも建物の形が変わるとか、見え方が変わるとかしてしまう可能性が出た場合にどうするか?
まずは、現場サイド(施工者)は現状把握した上で、クライアントに報告します。
クライアントは、設計者・工事監理者に相談し、何らかの変更指示が決まります。
クライアントから施工者に変更指示が発せられます。
これが、極めてセオリーな流れです。
問題は、「こんなのいちいち聞いていたら、現場が遅れて仕方ない。これは、こうやっておけばいいだろう」「設計図通りにやって、おかしいのは設計の責任。それを現場が上手く対応してあげてるんだから、いいでしょ。」といったいわゆる”現場判断”のみでことが進むこと。
これは、良くない。
結局、検査で指摘を受けたり、その場は上手くごまかしたとしても、やはり出来栄えに違和感や不具合が生じて、やり直しなど大問題に発展する危険があります。
だけど、現場にも不満が残る。
「そもそも、設計がきちんとしてない」など。
“設計図通りに施工することが難しい”というような問題があった場合、施工者サイドで無理矢理なんとかするのではなく、設計者や工事監理者、僕たちプロジェクトマネジャーや場合によってクライアントも一緒に知恵を出し合うことが必要です。
その際、自分の立場や主義だけを主張するのはダメです。
「そんな変更は認められない。図面通りにやってくれ。」
「私の責任では無い。そちらで対応して欲しい。」
「そんなことをしたら、お金はかかるし、工期が伸びて仕方ない。」
これでは良い方向には進みません。
『何がベストか?何をすべきなのか?』
これが大切です。
このためには、建築プロジェクトに関わった全ての人が『ONE TEAM』を意識すること。
『プロジェクトの成功とは何か?』
『プロジェクトを成功させるためには何をするべきか?』
これを全員で共有し、実行していくことです。
すごい設計者がひとりだけいても、超優秀な現場所長がひとりだけいても、建築プロジェクトが上手くいくとは限りません。
スーパーマンひとりいても、いい仕事にならない。
“いいチーム”が必要なんです。
建築プロジェクトで、”いい仕事はひとりではできないよ”というお話しでした。