【建設現場でがんばる若いゼネコンマンに伝えたい”自分が作る図面や書類は人に見せるため、伝えるためのものだよ”という話】
現場ではよく図面・書類・資料というものを作ります。
いわゆる工事、実際の作業に直接関係するものでも施工図・躯体図・製作図といった図面関係、施工計画書・施工要領書などの書類、工程表や会議の議事録なども重要な資料となります。
このような様々な図面・書類・資料を現場では日々、作り続けています。
ここで、いきなり本質的な話になりますが、では、
“これらの資料関係はなんのために作るのでしょうか?”
答えは、
『工事(作業)を確実に円滑に進めるため』
です。(“記録として残す”など義務的なものもありますが、大きく解釈すればそれも含まれますね。)
では、自分(工事担当者)がその資料を”作りさえすれば”工事はうまく進むのでしょうか?
僕の答えは、
『NO』
です。
何故なら、図面・書類・資料というのは、工事担当者が作ったからといって、実はその意味・価値は発揮されないからです。
例えば、一生懸命に図面を描いたとしても、それが実際に作業してくれる職人さんに伝わらなければ、あるいは間違って伝わってしまったら、自分が実現したい状況にならない訳です。
自分が悩み抜いて組み立てた工程も、職人さんに理解されなければ、工程通りに工事は進まない訳です。
つまり、『図面・書類・資料は、人に伝わって初めて意味・価値が生まれる』ということです。
逆に言えば、『図面・書類・資料は、人に伝えるために作る。人に伝わらなければ意味が無い。』ということです。
実に当たり前の話です。
しかし、この当たり前が、現実ではなかなか難しい場合があるようです。
僕たちプロジェクトマネジャーは、クライアントの技術サポートという立場で、工事の進捗に伴い図面関係や計画書、工程チェックを行います。
ある現場でのことです。
工事担当者から提出された施工図をチェックしたのですが、チェック段階とは言え、あまりにも精度が低かったため多くのチェックを入れ『指摘事項を修正した上で、再度チェック版として提出すること』とコメントしました。
この時の図面・書類の確認フローとしては、”工事担当者(施工者)→工事監理者→プロジェクトマネジャー→クライアント”の順番でチェック版を一回まわし、指摘事項を全て修正した上で受理版(承認版)としてもう一度まわす、という流れにしていました。
ただし、その前提は”チェック版とは言えほぼ完成形に近いこと”であり、チェックを一回まわせば大抵の指摘事項は出尽くし、その指摘の是正で完成版が出来上がるというものでした。
しかし、この時はチェック版の精度が驚くほど低く、本来期待しているチェック版のレベルではありませんでした。
なので、致し方無く、”再度チェック版で提出”という指示になった訳です。
さて、本題はここからです。
数日後、「再度チェック版を提出します」ということで回って来ました。
驚くべきことに、ほとんど直っていなかった。
直っているところももちろんありました。
しかし、その直っているところは、”直しやすいところ”で、直すべきところが直されてはいなかった。
直すべきところは、実はより深い検討が必要であったり、追加で詳細図を描いたりと、手間暇が少し掛かるものだったりしました。
しかし、そういうところは手付かず、あるいは適当な文章の追加で誤魔化そうとしており、到底了承できるものではありませんでした。
“何故、こんなことに?”
工事担当者の言い訳としては、「工程を考えると、すぐにでも承認をもらって工事着手しないと遅れが出てしまう。」とのことでした。
いやいや、全く理解できない話です。
急ぐのであれば、きちんとした図面・資料を作り、提出すれば良い話。
時間が無いからと、適当で良い訳はありません。
この工事担当者は責任感の欠如はもちろんですが、”他者目線”がまるで持てていないことがわかります。
“他者目線”つまりこの場合、図面や資料を受け取りチェックする側の気持ち・目線になっているか?ということ。
それを初めて見る人間がわかるか?理解しやすいものとなっているか?ということです。
『受け取り手がどう思うか?』ということです。
基本的な話ですよね?
これは、工事現場での話だけでは無く、全てのビジネスマン出されている課題と言えると思います。
やっぱり、「基準を相手におく」ということが大事なんですね。
その面で見れば、この工事担当者は”他者目線”が1ミリも無く、自分本意で『やった気になって気持ちよくなっているのは自分だけ』という「相手の時間も労力も無駄に奪っている」という状態を作り出す人ということになります。
この人に対する評価・信頼は、もう言わなくてもわかりますよね。
仕事がうまくいかない理由は三つあると思います。
「行動力不足」「情報力不足」、そして「想像力不足」です。
これがあるか無いかが「仕事ができる人」と「仕事ができない人」の差であり、”仕事ができない人の特徴”になります。
中でも「想像力不足」は痛いですね。
何しろ、”今の状況は?”、”どうするべきか?”、”こうした方がいいんじゃないか?”というように、情報に対するアンテナや取るべき行動の原点が「想像力」だからです。
とにかく、徹底的に相手のこと、相手の立場を想像してみることです。
これがクセになれば、きっと今より全然仕事がやりやすくなり、おまけに評価も上がることでしょう。
図面一枚、書類一枚作るだけのことですが、”他者目線”ここを意識してできるかできないかが大きな差になります。
“自分が作る図面や書類は人に見せるため、伝えるためのものだよ”というお話しでした。