建設現場でがんばる若手ゼネコンマンへ 〜その28〜

【新しい道】

『会社を辞めよう』

そう考え始めながらも、日々の仕事は充実していました。

そんなある日、僕の背中を強烈に押す出来事が起こりました。

やはり、引き鉄は”現場”でした。

どういうことか?

前々から言われていた”現場社員不足問題”ですが、これがいよいよ逼迫してきました。

その対応策として「支店の内勤社員がシフトを組んで、交代で現場に応援に行く」という話が持ち上がりました。

ただ、”どのようにすれば、意味のある現場支援になるか?”、”中途半端に人員だけ送っても、かえって現場の負担になるのではないか?”などの意見もあり、「まだまだ検討段階」ということでしたが、かなり実現性の高い話でした。

いよいよ僕の身に三度目の現場が近づいてきました。

しかし、今度はただの配属では無く、一応”応援”です。
ただ、応援が迷惑かけては本末転倒です。
それに、期間も明確でない。
2週間程度かも知れないけど、下手したらそのまま現場異動も全然あり得ました。

僕は既に『辞めよう』と思っている身です。

いったところで、まっとう出来ないであろうことは、前回の現場でわかっています。
『今度こそ』なんて気持ちは全くありませんでしたし、逆に”絶対無理”な自信がありました。

何より、最後の最後で、現場に迷惑をかけて会社を去るのは絶対に嫌でした。


『潮時だ』


僕はそう感じ、退職のための具体的なアクションを始めました。

まず、家族に話をして、理解を得ました。

そして、間髪入れずに、部長に退職の意向を伝えました。
驚いて、理由を尋ねられましたが、

理由・・・。

“現場配属になるリスクは嫌だ”というのも、当然嘘の無い気持ちなんですが、僕の中で芽生えた”将来リスク云々”もなかなか理解されないですよね?

何より、そんなことをどストレートに伝えるのは、失礼ですよね。

“辞める”と決めた時に、改めて自分と会話した時の一番大きな気持ちは
『人生一度きり。後悔したく無いし、もっとチャレンジしてみたい。
『僕なら大丈夫だろう。』

『なんとかなるし、なんとかしよう!』

というものでした。

家族も、この僕のチャレンジする気持ちを理解して、応援してくれたんですね。

『もっと違うことにチャレンジしてみたくなったんです。』

そう、伝えました。

もちろん、仕事に不満や職場の人間関係に問題があった訳では無かったので、そこは何度も強調しました。

最終的には部長も理解して頂き、退職の手続きが進むことになりました。
(本当に理解されたかは、わかりません。何しろ、なんの問題も無いのに、”チャレンジしたい”で安定を捨てる訳ですから。「なんだかわからないけど、バカだな。」そう思われていても、仕方ないですね。)

ただ、それ以降は早かったですね。
異動のお願いの時もそうでしたが、『人事ってすごく早く対応してくれるんだな』と改めて驚きました。
そう考えると、すごく良い会社だと思います。

申し出をしてから、引き継ぎ等の対応含めて1ヶ月くらいだったかと思います。

送別会も、購買部・調達部・同期・現場時代の方々・その他専門業者の方々など、いろいろやって頂きました。
本当に有り難かったし、それぞれ、非常に楽しい時間でした。

「で、これから何をやるの?」

どこの送別会でも聞かれました。

『建築知識を持ってない一般の人を助けられる仕事が出来ればと思っています。』

「・・・」

それはそうですよね(苦笑)。

実はこれは、僕がマンションを購入した時に感じたことでした。

内装のオプション工事について、デベロッパーのメニューに無いことがやりたくて、交渉になったんです。

その時のデベロッパーとのやり取りがとても衝撃的でした。

詳細はまた別な機会にしますが、その時に感じたのは、

『これは一般の人なら、かなり苦労をしたり、想いが実現しなかったりするだろうな。』

ということです。

デベロッパーが、何かオーナー(購入者)を騙している訳ではありませんが、正直優しく無い部分がある。

オーナーがそれに気づかなければ、それはそれで幸せも知れませんが、中には残念な不本意な思いをしている人もいるだろう、と。

そう思った時に、

『建築知識を持ってない一般の人を、僕の知識と経験でサポート出来るのでは無いか?』

と考えた訳です。

こうして、僕は11年3ヶ月勤めた会社を辞めて、”新たな道”を歩き出しました。


【建設現場でがんばる若手ゼネコンマンへ】というシリーズは、今回で一応区切りにしたいと思います。


ゼネコンを離れてから約15年経ってしまいました。

気づけば、既にゼネコンでのキャリアを超える時間を過ごしています。

15年前、新たな希望に向かって歩き始めた訳ですが、実はこれが想像以上に厳しかった(苦笑)。

その辺も含めて、今後はゼネコン時代以降の僕なりの『建築業界を生きている中で思うこと』をいろいろお話し出来ればと思います。