建設現場でがんばる若いゼネコンマンへ 〜その22〜

【建設現場の若手ゼネコンマンへのお薦め資格】

僕は、
・一級建築士
・1級建築施工管理技士
・建築積算士
・認定コンストラクションマネジャー(CCMJ)
・建築コスト管理士』
の5つの資格を取得しています。

この5つの資格は、実は建築・建設業務をなかなか幅広くカバーしています。
(僕は、建築系の人間なので、いわゆる”設備・電気・土木系”は取得していません。もちろん、これらを持っていれば更に強力だとは思いますが、取得する資格によっても、その状況は変わってきます。)

どういうことか?

例えば、一級建築士は、ゼネコンで仕事をするなら、設計であっても施工であっても、取得を奨励され、奨励というかほぼ”義務”的に、取得するようにプレッシャーをかけられたりします。
同様に、現場担当であれば、1級建築施工管理技士の取得は必須とされることが多いと思います。

という訳で、設計事務所で仕事をされる方等も加わり、一級建築士が約37万人、1級建築施工管理技士が約29万人と、業界の中でも非常に多くの方々がこの2つの資格を取得しているということになります。

この一級建築士と1級建築施工管理技士をざっくり大きくまとめて『現場寄り業務』とします。
設計の方は異論があるかもですが、設計も現場で打合せしたり、現状確認したり、監理者であったりして、現場に近しいですよね。
という意味を含めて、あえて『現場寄り』とします。

一方、建築積算士・建築コスト管理士ですが、これは、『内勤寄り業務』と定義させて頂きます。
もちろん、建築積算士・建築コスト管理士も現場に深く関わる場合も少なく無いんですが、一級建築士・1級建築施工管理技士とより色濃く仕分けした場合、『内勤寄り』と思い、このように分けました。

建築積算士は、主に設計段階で実施設計図に基づき数量積算や単価の値入れを行い、建築物のコスト(予定価格)を算出します。
算出結果を基に予算化されたりするので、数量の拾い漏れがあったり、単価が市場と乖離していたりすると、ゼネコンなどの施工者から提示される金額と差異が大きく、工事請負契約に支障が出るので、大切な役割を担っていると言えます。

また、建築コスト管理士は、設計フェーズのみならず、更に広い範囲で、企画・構想段階から建物竣工後の運営・維持管理のフェーズまでも含めた各フェーズに応じた工事費その他費用の算定、コストプランニング・コストコントロールを担う役割となっています。
その点では、コスト面に関して、一級建築士・1級建築施工管理技士とも相対する役割とも言えます。
建築プロジェクトにおいては、コストは当然非常に重要且つ大きな要素を占めるので、そのスペシャリストということで、極論すれば、設計者よりもクライアントに近しい立場と言えます。

これで、お分かりのように、一級建築士・1級建築施工管理技士は、”コストの面がやや弱い”ということになります。
ここで言う”弱い”は、『クライアント側から見て』というになります。

例えば、ゼネコン(施工者)であれば、積極的にVE提案をしてくると思います。
それは、ズバリ”自分たちのため”です。
もちろん、良いVE提案でクライアント側もコスト的なメリット・品質的なメリットが生じることもありますが、クライアントはゼネコンとの合意金額(工事請負金額)で既に予算組みをしています。
節約(減額)になれば、それに越したことは無いですが、既に予算として承知している以上、”そのままの内容で、その金額でやってもらえれば問題無い”のです。
にも関わらず、ゼネコンがVE提案を出すのは、自らの利益拡大を目論んでのことです。
(これは、悪いことでは無いと思います。あくまで、施工者側の知恵ということになるかと思います。)

なので、クライアント側から見たら、特段のインセンティブは無い場合が多いです。

また、設計者は、より自分の理想に近づけるために、施工段階に入ってからも、追加変更を行おうとすることが多々あります。
グレードアップの変更であれば、施工者は当然追加の金額を請求して来ますよね。
なので、設計者は、いろいろな説明を駆使して、クライアントの了解を得ようとします。
また、あってはなりませんが、設計の不備を指摘され、それを解消するために設計変更を行おうとする場合があります。
性能の担保はもちろん、工事金額の増額も無い形での変更提案ならまだ良いですが、クライアントに増額を強いるようなケースもあるので、ここはしっかりとした確認・検証が必要になります。
建築コスト管理士は、そういった面でのコストコントロール・コストマネジメントの役割が期待されているということです。

更に、CMr(認定コンストラクションマネジャー)ですが、『CMrとは、建設プロジェクトにおいても、より透明性を高める発注者ニーズが高まってきており、そのため、 「設計者」や「施工者」といった従来の利害関係者がプロジェクト全体をマネジメントするのではなく、第三者性を持つ専門職がその役割を担うことが求められ るようになってきた。
この専門職がCMrである』ということです。

設計や施工はもちろんコストも含めて、よりクライアント側で、クライアントの代理人的立場で、建設プロジェクト全般に渡り、クライアントを支援していく役割ということになります。

これで、5つの資格が建築・建設業務を幅広くカバーしている、ということがご理解頂けたかと思います。

ただ、くれぐれもこの資格の中で上下があるというものでは無いことに注意して下さい。

それぞれが非常に専門性を持ったプロフェッショナルなのは間違い無いです。
それぞれが、それぞれの役割をきちんと果たすことで、ベストなプロジェクトとなります。

さて、『僕はこの5つの資格を取得しています。』とお伝えしました。

この状態は、この業界で生きていくには、なかなか都合が良い状態だと思いませんか?

実際、”なかなか良い状態”です(笑)。

何がいいかって、文字通り、『幅広くカバーできる』んです。

しかも、建築積算士・建築コスト管理士・CMr自体が、建築・建設業界では少数です。
設計段階・施工段階、どちらのフェーズであっても、プロジェクト全体を見通した発言・提案が出来ます。
また、逆に企画・構想段階であっても、設計・施工を考えたスケジュール提案だったり、概算コスト提案が出来たりもします。

ある意味『オールマイティ』です。

これは、この幅が広い5つの資格を身に付けた賜物だと思っています。

現場の若手ゼネコンマンは、『現場寄り』の一級建築士と1級建築施工管理技士は、ある意味当然のように取得を目指すかも知れません。

なので、『内勤寄り』の建築積算士・認定コンストラクションマネジャー(CCMJ)・建築コスト管理士の3つの資格は、自分の価値を高めるための、”お薦め資格”ということが出来ると思います。