建設現場でがんばる若いゼネコンマンへ 〜その17〜

Photo by mr_stagram_

【最も苦しい時。そして、人生の転換点。(1)】

現場を異動になりました。

今度も着工からの現場で、既存建物の改修とその隣地(買収後だったので、敷地としては一体になっていました)に新築しブリッジで繋ぐ、という内容のプロジェクトでした。

なので、既存改修と新築工事の同時施工になります。
新築の方は、温泉施設にするとのことで、温泉掘削から始まりました。
温泉掘削は、別途工事だったんですが、温泉業者さんとの調整や打合せを任されました。

現場のスタッフですが、担当所長のMさん。
その下に僕、そして後輩が2人、設備担当で僕の同期がひとり。
それに、他現場も見ている統括所長。
設備担当の同期は、他の現場も見ている関係で、週に2〜3日現場に来るという感じでした。

この現場で、僕は初めて”工事自体”のまとめ役になった訳です。

最初に、僕の反省点、悪かった点を言います。

よく思い返せば、僕は”しっかり考えて、仕事に取り組めていなかったのでは?”と思います。
なんて言うか、正解を探しながら、やっていたんですね。
「正解を求めるのは当たり前」と言われるかも知れませんが、ニュアンスが違うと思うんですね。

自分の頭で考え、”こうするべき”の結果として、正解を求めるのと、”誰かが指示してくれた正解(と思われる)の行動”を求めるのは、違いますよね?

僕は、”誰かの指示の正解”を求めていたのだと思います。
これは、1、2年目なら、まだ許されるでしょう。
しかし、僕はこの時、もう6年目でした。

小手先の交わし方は出来たかも知れませんが、本質的な現場を引っ張る力は全く備わってなかった。
自分なりに必死にやってきたつもりでいましたが、それまで、本質を意識して、しっかり取り組んで来れていなかったツケが回ってきた気がしました。
しかし実は、自分にもその自覚が無かった訳では無くて、むしろ遂に来てしまった現実に、毎日ビビリながら過ごしていました。
これが、僕の甘さであり僕の反省点で、悔やまれるところです。
とは言え、それがわかった今、あの頃に戻っても、その時以上に出来るかは、疑問なんですけどね。

そして、それはそれとしつつも、それ以上の”運の悪さ”が僕に降りかかっていました。

この、担当所長の『Mさん』です。

毎日毎日叱られていました。

「俺は、そんなこと、言ったか?」
「なんで、こんなことをやってる?」
「俺は、聞いて無いぞ。」

これを毎日毎日言われました。

これだけ見ると、これは僕が『完全に仕事が出来ないヤバイ奴』ですよね?

しかし、実際には、
「そんなこと、言ったか?」→”指示をされ”、
「なんで、そんなことをやってる?」→”指示に従い、仕事をして”、
「俺は、聞いてないぞ。」→”確認すべきことは事前に確認し、報告した上で実行した”、
のです。

このように、言ったこと・言われたことが、ことごとく、ひっくり返されます。

それでもまだ、”僕がダメなんじゃないか?”って、思いますよね?

ここで、前の現場所長の

「何かあったら、ひとりで抱えずに相談しろ。」

が、思い出されました。

偶然、僕の身近にこのMさんと仕事をしたことがある先輩がいることがわかり、電話で話しました。

すると、その先輩は、Mさんのために精神的におかしくなり、しばらく休んだことがある、とのことでした。
もっと、Mさんについて調べてみると、いい話なんかはひとつも無く、人格はもちろん技術的にも全く担当所長というポジションに相応しくない、という話ばかりでした。
(「なんで、そんな人がそのポジションにいるのか?」なんですが、世の中的にも、業界的にも、まだまだ”年功序列”が色濃い時代だったんですね。しかし、あの年齢で担当所長であったことから、会社の評価は低かったと思います。)

前の所長は、このことを知っていて、僕を心配してくれていたのでした。

日に日に、Mさんへの不信感・不快感・反発心は高まっていきます。

話しがほとんど噛み合わない。

頭に来て、
『じゃ、どうしたらいいんですか?』
という僕の問いに
「それは、お前が考えろ。」

『はぁ?こいつ、マジで頭おかしいんじゃないか?』
『こいつ相手にしてると、こっちがおかしくなる。』

実際、体調がおかしくなり、心療内科も受診しました。

これは余談で、あくまでも個人の感想なんですが、自分で『おかしいな?』と思えるくらいだと、まだメンタルは大丈夫なんですかね?
その時の診断としては、「様子をみましょう」的なことで、その後も2回くらい通ったんですけど、行くのをやめてしまいました。
本当は即座に『ドクターストップ。もうこれ以上、仕事を続けるのはよくありません。』っていう、診断書が欲しかったので。
でも、そんなことを考えられること自体、まだ大丈夫ってことなんですかね?

とにかく、ドクターストップにはならず、まだしばらく、この状態から抜け出すことは出来ませんでした。