建設現場でがんばる若いゼネコンマンへ 〜その8〜

【大阪ふたつ目の現場】

大阪ふたつ目の現場は、ひとつ目と対象的に工程管理も現場内の管理もバッチリの現場でした。
当時、割りと”週休2日”が奨励されていたんですが、実際に取れていた現場は少なかったと思います。
そんな中で、この現場はほぼ着工から竣工まで週休2日でいけました。
しかも、水曜日は”ノー残業デー”で、結構早く帰れました。

こう書くと”随分工期に余裕がある楽な現場だったんだな”と思われるかも知れませんが、実はそんなことはありませんでした。
ただただ、担当所長(当該現場の責任者。その上には、他現場含めていくつか見ている統括所長がいました。)のマネジメントの巧さだったと思います。
それは、部下を適材適所で上手く使うことも含めて。

しかしまあ、変わった人ではありました(苦笑)。
年齢を考えたら、担当所長では無くもっと上の違う役職で、支店勤務でもおかしくない人でした。
一説には、自ら現場を希望して、しかも一線の場にいられるように、わざと出世(役職を上げる)しないようにしてるとか、噂はありました。
真偽は定かではありませんが。

その担当所長は、現場事務所に泊まり込んで(住み込み?)いました。(これが許されていたのは、この人だからなのか?地方現場ならではの大らかさなのか?はわかりませんが。)
確かに、交通の便は良くないところで、僕も毎日のように車で来ている先輩に最寄駅まで乗せてもらっていました。
で、その担当所長は泊まり込んでいるので、誰より早く現場に出れるんですよね。
朝礼が始まる頃に現場の奥の方から現れるんです。
手には土嚢袋を持って。
その中には現場巡回で見つけたゴミが結構入ってるんですよ。
作業後の片付けを結構厳しく言われていたので、毎朝その土嚢袋を見ると、各職長さんと僕たち工事係は「あちゃ〜」という気分になったものでした。
そして、それを職長会長に「ホレ」といいながら渡して朝礼に出る、といった感じでした。
そして、担当所長は朝礼が終わると事務所に戻り、10分程すると先輩と僕が呼ばれます。
すると、現場巡回で気づいた指摘事項がいくつも書かれたメモが渡され、是正指示を各職長に出すように指示されます。
これが、当たり前のように毎日行われました。
そして、この指摘・指示は朝だけではありません。
朝しか現場に出ていないのに、日中も要所要所で的確な指示・指摘が飛んできました。
ある時は『現場見てないはずなのに、何で今の状況がわかったんだろう?』という時もありました。
今思えば、現場の進捗をしっかり把握していたので、”工程上次の作業は◯◯で、そのポイントは⬜︎⬜︎だ。ならば、ここを確認しておく必要があるな。”という判断で、僕たちに指示出ししていたのでは無いか?と思います。

そんなことで、現場は本当に粛々と進みました。
繰り返しますが、そんなに余裕たっぷりの現場ではありませんでした。
建物のデザイン的にも決して簡単では無く、施工段階で工夫しなければならないことも結構ありました。
ただ、そういった課題についても、しっかりと検討する時間が取れ、職人さんとも打合せをし、実行するというプロセスが確実に踏めました。
そこは、担当所長からの指示というよりは、先手先手で気付きを与えて頂いたこともあり、自ら率先して、検討することが出来たと思います。

こう書くと、本当に素晴らしい上司に見えますが、本当に変な人でもありました。
なので実際は、なるべく会話しなくて済むならしないようにしていたくらいです(苦笑)。

そんな現場のマネジメントはほぼ完璧に思える担当所長の失敗談があります。
それは、ある台風待機でのことでした。
台風の接近に伴い、支店から夜間の現場待機の指示が出ました。
担当所長は泊まり込んでいることもあり、自らその役を勝手出て、もうひとり歳の近い課長と係長を指名して、僕を含めて若手は家に帰されました。

幸い台風は大したことはありませんでした。
翌日、現場に行くと課長と係長が既に机で仕事をしていました。
しかし、少し様子が変でした。
聞いてみると、僕たちが帰った後、まあまあ派手な酒盛りが始まったそうです。
台風待機を経験したことがある人ならわかると思いますが(今はもうそんなことは無いんですかね?)、まあ程度の差こそあると思いますが、大抵お酒が入りますよね。
22時も回れば、ほぼ確実では無いでしょうか?
で、担当所長たちは結構飲んじゃったらしいんですね。
で、悪いことに統括所長が現場の様子を見にきたらしいです。
もちろん、担当所長たちはそんなことは一切知らなかったようです。
で、その状況を見た統括所長にみんな叱られ、特に担当所長は別室で結構ガッツリ叱られた、とのことでした。

僕たち若手は大爆笑!
同時に「その場にいなくて良かった〜!」と課長、係長を目の前に何ともデリカシーの無いことを言いました、とさ。

ただ、今思えば、本当にマネジメントの素晴らしい現場だったと思います。
僕自身、初めて担当する工種・工事がいくつもあったんですけど、しっかり取り組むことができ、自分の発案・工夫を現場に実装することも出来ました。
そういう意味では、『現場で知恵を表現する』ということを教われた現場だったと思います。

この現場も無事に竣工を迎え、僕は次の現場へ異動しました。

※本記事ベースのVTube動画です。→ https://youtu.be/jbkO27lt1Cw