【若手建築設計者に伝えたい”設計業務はビジネス”という話】

建築プロジェクト、特に僕たちのようなプロジェクトマネジャーが参画するプロジェクトでは、設計者を選ぶところから関わっているケースが多くなります。

もちろん場合によっては、設計者があらかじめクライアント(発注者)側で選ばれ、基本設計のスタートと同時に僕たちプロジェクトマネジャーが参画することもあります。

その時に、僕たちがまず確認しておかなければならないのは、
『クライアントの基本計画、それと設計者が選ばれたの経緯』
です。
特に、”どんな設計業務の内容で発注されたのか?”という発注要項の内容についてです。

実はこの時既に、クライアントと設計者の間で、認識がズレが起きていることがあるんです。
最初の段階で、そもそもやるべきことに認識のズレが起きていては、その後の設計業務は当然上手くいきません。
ズレがわかった場合、その認識のズレの調整から入るので、時間も手間もかかります。
当然、竣工まで含めた建築プロジェクト全体に影響が出てしまいます。

ただ、この”ズレてる”ケースが意外と多いんです。

“何故、このようなことが起きるか?”

その原因は、ちょっと言いにくいですが、クライアント側の『基本計画(構想)の詰まり具合』と『設計業務に対する発注要項書の粗さ』に問題がある場合が多くあります。

どういうことか?

例えば、”基本計画(構想)”において、『この建築プロジェクトで、何を、何のために、どのような内容で、いつまでに、いくらで整備しなければならないか』が明確になっていなければなりません。

そして、『設計者は、基本計画(構想)に基づいて、より精度高く、且つ、設計者としての知見を多分に盛り込みながら、設計図書をまとめ上げる』という主旨の発注要項書が作成されている必要があります。

更にその中には、『設計者の提案に期待するところはどこか?』『設計者の提案を受け入れられるところはどこか?』も示されることになります。

また、クライアントが設計者に要求する能力・資質として、担当技術者の資格取得状況であったり、今までの業務実績だったり、会社(設計事務所)としての実績やこのプロジェクトに当たっての取組体制を示すことを求めたりします。

このような内容がしっかり示されていない”基本計画”や”発注要項書”のまま、公募や選定に入ってしまうと、「ここなら大丈夫だろう」と選定した会社であっても、様々なトラブルが生じる可能性があります。

このように、基本計画と設計者を選ぶための発注要項は、しっかりしたもので無いと、関係者全員が後々大変な思いをすることになります。

ただ、設計者側に問題があることもあります。

基本計画(構想)、発注要項の内容にファジーな部分や不足部分があったとしても、業務内容、つまり、”自分が求められているもの、自分がやらなければならないもの”は、契約当初できちんと把握していなければなりません。
その上で、要項と違う内容が求められているのであれば、その旨をきちんとクライアントに伝えて、協議し改善していく必要があります。

ただ、意外とこれができていない設計者が多い印象です。

しかしこれは、設計スキル云々ではなく、『”ビジネス”として当たり前では?』と思うところもあります。

お互い”こうだろう”で進んでも、土壇場で大きな問題にブチ当たり、お互いに責任をなすり合うことになりかねません。

どんな要項であれ、その内容で受注した以上はその要項に従って業務を行い、成果を上げる。
当たり前ですが、それが”契約を履行する”ことになると思います。

『設計業務もビジネス』

若い設計者さんは、この辺も意識しておいた方がいいと思います。