【家を買う時は”プロ”を助っ人につけた方がいいという話】

『一般の人は、結構苦労するんじゃないかな?』

これは、僕がマンションを購入した時に感じたことでした。

内装のオプション工事について、デベロッパーのメニューに無いことがやりたくて、交渉になったんです。

・リビングと和室の間仕切引戸を引き残しが無いように壁内納まりにする
→要は、扉をかくして部屋を広く使いたい

・対面キッチンのレンジ前の壁をガラス間仕切に変えて、ダイニングが見えるようにする
→要は、キッチンからダイニングが見えることで開放感を出したい

・キッチンの収納棚を指定寸法通りに造作する
→要は、今まで使っていた食器棚と同じ作りにして、使い勝手が変わらないようにしたい

大きくは、この3点。

しかし、「申し訳ございませんが、これは対応しかねます。」とのこと。

理由を尋ねると「大幅な設計変更が伴うため、間に合わない」と。

僕の部屋は8階。
その時の現場は基礎工事が始まったばかり。
僕の要求している変更は、基本的に間仕切変更すら伴わない。
明らかに、理屈に合わない回答でした。

当然、納得のいく説明を求めました。

しかし、デベロッパーの営業担当では技術的な話は全く出来なかったので、技術担当を呼んでもらいました。

なのに、残念ながら、その技術担当もダメ。
結局、デベロッパーからの提案で設計者と現場所長を交えて話をすることになりました。

そうなれば、さすがに話しは早い。
僕が変更を要求している内容は、設計変更や工期に問題無いことが、すぐにわかりました。

ただ、問題は続きました。

後日、この変更に対するデベロッパーの設計変更案と見積が届きました。

ところが、その変更案は僕の希望を満たしていないところが多く、見積金額も到底納得いくものではありませんでした。

仕方がないので、僕が納まり図面(設計変更図面)を書いて説明し、なんとか(それでも、しぶしぶですが)了承したという感じでした。

金額にしても、僕の方から
『公共単価(公共工事で採用されることの多い基準単価)で見ても高いし、一般的な材料代と工事手間で考えても、こんなにはならないのでは?』
『再検討して頂けますか?』

こんなやり取りが何度かあり、最終的にはなんとか納得する金額に落ち着かせることができました。

ただ、くれぐれも、僕が無理な金額を押し付けた訳ではありません。

当然、いろいろ調べあげ、『どうしても折り合えないなら、最悪、その部分は別途工事にしても良い』と伝えていました。
他の業者さんに頼んだ方が安く良いものになると、裏どりが出来ていたので。
(ただ、別途工事を入れると、その分の段取りや調整は、基本的に発注者(つまり購入者)がやらなければならないので、かなり負担です)

更に、僕の部屋の内装工事が近づいて来ると、現場所長からデベロッパーの営業担当を通じて連絡があり、「施工図・製作図を確認しながら、個別打ち合せをしたい」と申し入れがあり、何度か打合せを行いました。

そこには、電気・設備担当のサブコンさんもいて、本当に現場打ち合せのようで、少し不思議な懐かしい気持ちでした。

また、現場事務所の書棚に僕の部屋名のキングジムファイルがあったのですが、それが僕の部屋の分だけで、『あ、他にこんな風に打ち合せしてる人、いないんだな。』と、少し笑ってしまいました。

まあ、”うるさい客だ”と現場所長としてリスク管理していたのだと思います。

だけど、所長は本当にいい人で、一生懸命に僕の希望を聞いてくれました。
おかげで、納得のいく打合せができました。

なので、内覧会で初めて部屋の中を見た時、僕の理想通りだったので、とても嬉しかったのを覚えています。

この一連の経験から、

『僕は建築のプロだったから、いろいろ自分の希望通りに交渉出来たけど、他の人はどうなんだろう?』

『デベロッパーが悪いとは言わないけど、もしかしたら、購入者は諦めなくてもいいものを諦めたり、もう少し金額を抑える工夫が出来るのに、それに気づかないでいたりするのではないだろうか?』

そんな疑問が湧いてきました。

『家を買ったり、家を建てたり、これって人生で最大の買い物なのに、購入者を助ける役割の人っていないな。』

多分、一般の人が勘違いしがちなのは、デベロッパーの営業担当や建築家さんが、自分達の理想の家を建てる・実現する唯一のパートナーだと思っているということ。

よく考えてもらえばわかるんだけど、デベロッパーやハウスメーカーの営業担当はもちろん建築家(設計者)も大工さん(施工者)も、実は利害関係者な訳で、純粋に購入者(発注者)の側に立つ人では無い、ということ。

何故なら、”その人達は家や建物を買ってもらったり、建ててもらうことでお金を稼いでいる”から。

これだとどうしても、彼らは「やめた方がいいですよ」が言えない。
または、彼らが言う「やめた方がいいですよ」は彼らにとって”都合が悪いことが多い”。
面倒くさかったり、自分達の利益にならないものだったり。

このままだと、購入者(発注者)が損をすることになってしまいます。

もちろん、全部が全部、このようなケースではありませんが、可能性は多いにあります。
ただこれは、仕組みの構造的な問題なのであって、営業担当や建築家や大工さんが悪い訳ではありません。
あくまで、建設業界でお金を稼ぐ人の役割と仕組みの問題です。

で、だとしたら、

『僕の知識と経験を使えば、このような状況を回避できるのではないか?』
『これって、人の役に立てるのではないか?』

『これは、もっともっと多くの人の役に立てるのではないか?』

と思ったこと。

これが、僕が独立した理由でもあります。

裁判では弁護士さんに力を借りるように、家を建てたり買ったりする時は

『建築のプロの力を借りた方が良い』

という話です。

ただ、同じ”建築のプロ”でも、状況と役割によって違うことがあります。
建築家さんも大工さんも、もちろん建築のプロ。
だけど、状況と役割によって、力が発揮しにくいことがある、ということです。

弁護士さんのように、購入者(発注者)の代理人のように支援してくれる人がいたら、いいですよね?

何しろその人は、購入者(発注者)が家を買おうが買わまいが、自分の稼ぎには関係ないので。

購入者(発注者)が”買うか?買わないか?”の判断を支援することで報酬を得るので、建てることで報酬を得る立場の人たちとは、決定的に違うことになります。

これって結構難しいですが、自分が家を建てたり、家を買ったりする時は、がんばって

『100%自分の見方になってくれる建築のプロ』

を見つけることをお勧めします。

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